紫の花の約束
2026/10/10
紫の花の約束
先日、親戚のおじさんが急に亡くなった。
突然の知らせに驚いた。
葬儀はうちでさせてもらうことになり、病院へお迎えに行き、その日のうちにお通夜を迎えた。
以前、親戚のお葬式で一緒になったときのこと。
おじさんが、奥さんも交えた何気ない会話の中でこんなことを言っていた。
「俺が死んだときは、紫の花で頼むわな!」
そのときの言葉を、私は覚えていた。
花屋さんには、できるだけ紫の花を多めにしてほしいとお願いした。
おじさんはいつもお洒落だった。
見た目はちょい悪風で、知らない人が見たらちょっといかつい(笑)
でも、とても優しい人だった。
奥さんとは本当に仲が良く、どこへ行くにもいつも一緒だった。
生前、おじさんは杖をついて歩くようになったり、施設に入ったりするのは嫌だと話していたらしい。
人に弱った姿を見せたくなかったのか、それとも誰かに世話をかけたくなかったのか。
突然のお別れは、あまりにも悲しい。
それでも、そんな生前の言葉を思い返すと、どこか最後までおじさんらしかったような気がする。
遺影写真も、やっぱりちょい悪な雰囲気。
背景は淡い紫のグラデーションにした。
出来上がった祭壇と遺影写真は紫でまとまり、見た人が口々に、
「○○ちゃんらしいなぁ」
と言っていた。
ご住職も同じことをおっしゃっていた。
式場には、大漁旗やだんじりの旗も飾られた。
大漁旗といっても、おじさんは漁師ではない。
還暦のお祝いに甥っ子や姪っ子から贈られたもので、みんなの寄せ書きがしてある大切な旗だった。
派手好きで、祭り好き。
紫の花に、大漁旗に、だんじりの旗。
お葬式の式場とは思えないような光景だった。
でも、不思議なくらいおじさんらしかった。
最後のお別れでは、紫の花に囲まれたおじさんに、みんながそれぞれ声をかけた。
悲しい中でも冗談が出て、笑い声もあった。
最後まで、いつものみんなだった。
出棺のときには、大漁旗を棺にかけた。
そして奥さんの希望で、生前おじさんが好んで着ていたスカジャンを着てもらった。
火葬場では、そのスカジャンを棺にかけて、最後のお見送りをした。
棺を通してではあるけれど、奥さんのぬくもりが、最後にもう一度おじさんに届いたような気がした。
奥さんから、
「本当にいい葬儀ができた」
と言ってもらった。
ほかの親戚からも、同じような言葉をいただいた。
何をもって「いいお葬式」と言うのか、正直なところ私にも分からない。
でも、みんながそう感じてくれたのなら、きっとそれが答えなのかもしれない。
何より、本当におじさんらしいお葬式だったと思う。
以前、別のお葬式で教えてもらった言葉がある。
「自分のできることをしたらいい」
今回も私は、自分のできることをしただけ。
実は、奥さんとも一つ約束をしている。
いつか、その約束を果たす日が来るのだろうけど、それはずっとずっと先であってほしい。
そのときが来たら、今度は奥さんらしい祭壇で、奥さんらしいお見送りをしてあげたい。
お葬式は、一つとして同じものはない。
その人には、その人らしいお見送りがある。
おじさん。
あのときの紫の花の約束、
ちゃんと守ったで。


